理事長所信

一般社団法人 佐野青年会議所

第53代理事長 山口 英雄

いつの日だったか、誰かに優しくされたことがある

今ではその人の顔を思い出すことはできない

それでも、優しくしてもらえたこと
その時、心の底から嬉しかったこと
感じたことは記憶として今も心に残っている

それが優しい人になろうと思った理由
誰かに優しくできる人になろうって

誰かに小さな優しさを届けたら
次にまた小さな優しさが連鎖している

思いが繋がり未来は希望に溢れていく
人の優しさと強さの連なりが生み出すまちの躍動感

始めに私たちが望めば、きっと世界は変えられる
始めに私たちが動けば、きっと世界は変えられる

 

【 プロローグ ~コーヒーに浮かぶ思い~ 】

アメリカのサウスカロライナ州の小さな町、ブラフトン。そこに The corner perk というコーヒーショップがありました。地元の人で賑わうその店に1人の女性客がやってきたところから話は始まります。
その女性客は自分のコーヒー代を支払った後、それとは別に100ドル札を渡して店員にこう言いました。「このお金が無くなるまで、ここにきたお客さんの分をご馳走して。」
店員は驚きましたが言われたとおりに100ドルが尽きるまで「先程来たお客さんが皆さんの分まで払ってくれたのです」と説明しながらコーヒーを提供し続けたのです。この話は1つの町に留まることなくアメリカ全体に広まっていきました。コーヒーをご馳走になった人が、次にくるお客さんのためのコーヒー代を払っていく運動として。
最初の女性がどのような「思い」で100ドルを置いて行ったのかは分かりません。後にそれが運動として広がりを見せることなんて想像さえしていなかったはずです。始まりの「思い」は大きいものでなくとも、多くの人を経て送られ続けていくことによって「思い」の持つ力は増幅されていきました。次へと送り続けられ、広がりを持った「思い」は地域のみならず社会全体に影響を与えていく可能性を秘めているのです。

【 優しさと強さ ~始まりの人として~ 】
私たちの生きる時代、そしてこの地域は先人たちの「思い」と「行動」によって創られてきたものです。
今よりも良く在りたい、自分以外の誰かにより良く在って欲しいという未来に向けた「思い」はすなわち、次の世代や他者などの自分以外のものに向けられた「優しさ」です。そして先人たちはそれを現実のものにするために行動する「強さ」を持っていました。今の時代や地域はそうした先人たちの強さによって優しさに満ちて私たちの世代へと送られてきたのです。そして今、次の世代に優しさを送る立場に私たちはいます。私たちは現在の責任世代として、次の世代に繋いでいくものに強さをもって真摯に向き合わなければなりません。
少子化、超高齢化社会など今まさに起きている日本全体を覆う社会構造の変化は激動の時代を迎えています。社会構造の変化に伴って、私たちの生きる現在には地域の未来に向けて解決すべき、考えるべき課題が多く存在しています。そこで私たちに求められるのは、受けてきたものを繋いで送るだけでなく、時代の変化に応じた新しいことを始め、新しいものを創り上げていくことです。
コーヒーショップで最初に100ドルを置いた女性。そんなストーリーの「始まりの人」として、私たちは優しさと強さを発揮していく必要があるのです。

【 始めよう、躍動する地域 ~優しさと強さをもった人で溢れるまち~ 】
優しさと強さをもった人で溢れた社会。それは優しさを繋ぐために皆が行動を始め、行動を通して人の思いが伝播し、増幅して社会を変える力へと繋がっていく社会です。現在の社会にはそのためのシステムが構築されています。クラウドファンディングを通して社会活動などのための資金を集めることは容易なものとなりました。また、SNSを通して仲間や賛同者を集めることも以前とは比べ物にならないくらいの規模で行うことができます。一方で、地域社会を変える主体はその地域に住む人であり、それを実現するのは地域の人々によって創られてきた地域固有の繋がりです。
東日本大震災で、私は被災された多くの人々の役に立ちたいと支援活動へと駆られました。被災地で被災された人々への炊き出しを行う中で驚いたのは、被災地の人たちの繋がりです。皆が同じように苦しい環境にある中で、自分のことを考えるだけでなく隣にいる人を思いやり、助けようとする姿は美しくありました。笑顔で声をかけあい、支えあい助け合いながら日々を暮らす人の姿に復興に向けた力を感じました。こうした繋がりこそが現在着実に復興の途にある被災地の原動力になっているのです。勿論、地域外からの支援は不可欠ですが、地域に暮らす人々の地域で育まれた優しさと強さこそが地域を作り上げる根源なのです。
地域においてそれぞれがそれぞれの立場で優しさと強さを持って行動を始めていく。その行動が地域を創る原動力として連鎖し、優しさが増幅していくような地域。地域の至る所で様々なことが起こり、それが地域に新たな価値を生み出す力となっていきます。その力によって、少子化、超高齢化の道を進む私たちの地域を次の世代に希望に満ちたものとして繋いでいくことができるのです。
そこに住む人々が強さを持って行動することで創られていく地域。幾重にも重なる優しさの連鎖が力強く織り成されていくまち。そんな躍動感あふれる地域を目指して、私たちは行動を始めていきます。

<優しさと強さが連鎖するまちづくり>
現在、少子高齢化の進む時代にあって、絶対的な人口減少時代に突入しています。
2017年現在、佐野市には6万人強の生産年齢人口が存在しています。しかしながら過去から未来にわたってその数は減少の一途を辿り、2040年には5万人を切るところまで進行することが予測されています。その結果として税収は減少し、行政サービス等が質量的に低下していく可能性があります。それだけでなく、地域の空気から人が創る活気や元気の源である人の減少は地域の空気感をも変えてしまうかもしれません。そんな決して明るいだけでない未来を前にしている現在。佐野市の在り方を行政に頼るのではなく、まちを創る、その地域に住む市民の協働を進めることが求められています。地域に住む我々自身が、住まうまちとしての魅力に満ちた佐野市を創り上げていくことが必要なのです。
「私たちのまちは私たちがつくる」という市民主権の考えの下、佐野青年会議所は活動してきました。その中で2014年に指定管理者として受託しました。市民活動センターここねっとは、市民が集まりまちづくりにおける活動の場として、そして佐野市の市民活動に対する情報集約の場としての機能を果たしています。
協働を進めるため、そして佐野市を次の時代へと繋いでいくために必要となるのは、まちのことを考える優しさと、その思いを行動に移すための強さです。そのために、ここねっとの持つ機能を最大限発揮するための仕組みを構築します。まちのことを考える優しさを育むには、まずまちのことを理解することが必要です。自らのまちの現状を理解して初めてまちのあるべき姿や理想について考えることができるようになり、何をすべきかについて見えるようになります。理想を描いてすべきことが分かった段階にある人を行動へと駆り立てる強さは、現状の理解と理想を誰かと共有し、実行しようとする過程で発揮され、磨かれていきます。理解し、理想を描いて思いと行動を共有していく。ここねっとの本来的な役割である市民活動センターとしての機能を支えるとともに、その場と情報を活用してまちに対する優しさと強さを育むプロセスを企画実行します。こうした活動を通して、次の世代に繋ぐ人とまちを創ります。
地域に対する優しさと強さを育むことで、地域をより良くする運動は生み出されていきます。この仕組みこそが思いを次の世代へ繋ぎ、そして市民活動はより一層広がり続けていくのです。

<優しさと強さを持った仲間づくり>
志を同じくする者の存在によって、活動や運動はその力を増していきます。そして、より多くの人の交わりの中で、そこには切磋琢磨しながら成長する機会が生まれていきます。佐野青年会議所においても、運動における原動力たる新しいメンバーを拡大していくことは、より一層佐野市が優しさと強さに溢れたまちとなるために不可欠です。
志を同じくする「同志」となるためには相手を理解し、佐野市の現状やそこにおける我々の活動の意味を理解してもらう双方向の関係を創ることが必要です。青年会議所の活動は常に自分以外の誰かに向けられた優しさに基づいています。私たちが未来の同志をまず理解した上で、こうした私たちの活動を理解してもらうことが必要です。そして、活動を通して得られる経験や仲間の存在を実際に体験してもらうことで、活動に共感してもらうことができるのです。相互の理解と体験の共有を通して得られる共感によって、まちを創る原動力となる同志の存在を増やしていきます。
こうして増えていく仲間と共に、相手を思いやる優しさと積極的に行動する強さを備えた人材となるべくJAYCEEとして学び成長していく機会は活動そのものにあります。青年会議所の持つ様々な機会を通して個々人が成長し、力強くJC運動を発信していくことができれば、未来に向けて躍動感ある地域が実現されていくのです。

<優しさと強さのある組織づくり>
およそ70年前に日本における青年会議所運動は産声を上げ、佐野の地に青年会議所が生まれて半世紀以上の時間が過ぎています。運動を始めた先人たちはまちづくりの「始まりの人」でありました。時代も人も急速に変化していく現在にあっても、未来に向かって拓かれた優しさと行動を起こしてきた強さは受け継いでいかなければなりません。過去から受け継いだものを次の世代に返すことは我々の責務だからです。そしてそのためには、環境変化に応じて新たなものを始める「始まりの人」であり続けなければなりません。私たちは、誰のために何をしていくべきなのかを常に考え、時代の変化に応じて新たな挑戦をし続けていきます。
変化に挑戦していくために、膨大な情報から取捨選択をして最善の決断をし、行動していくことになります。変化に伴い既存の情報が即座に陳腐化していく中で最善の決断をするためには、知識や情報を常にアップデートしていくことが私たちに求められています。そのための様々な機会が、日本にとどまらず世界へと広がる青年会議所のネットワークには存在しています。青年会議所という世界組織の情報のスケールメリットを活かすために、メンバー間でその情報を共有し組織内に循環させなければなりません。その情報をもとにして、メンバーには様々な機会を自ら「取りに行って」もらいます。新たな変革を始めようとする者として、自主自立のまちを実現しようとする青年経済人として、受け身ではなく攻めていく姿勢が大前提です。変化についていくのではなく、変化の先頭に立つ。まちづくりに参加するのではなく、まちをプロデュースしていく。そんなJAYCEEであるために、そんなJAYCEEが集まったJCであるために組織として活動していきます。

【 エピローグ ~未来へと繋がる背中~ 】
父は地域の子どもたちを集めてテニスの指導をしていました。テニスが好きだった、子どもたちが好きだった、人と接するのが好きだった父。そんな父の影響から私もテニスの指導に関わるようになりました。父が引退した今、テニスの指導をする機会は減りましたが、私はまちづくりを通して今も様々な人や仲間と接しています。私が父の背中を見て人と接するのが好きになり、父の背中から誰かのことを思う優しさと誰かのために行動する強さを知ることができたのです。テニスからまちづくりへと手段は変わっても、誰かのためにありたいという気持ちは変わりません。私たちは、未来を思い描いては行動し、このまちを変えていきます。そして、私たちが見せるその「背中」そのものが次の世代に繋がるのです。

私は父を見てテニスの指導を始めました。そしてその私がかつてテニスを指導した子どもが現在中学校の教師となり、テニスを指導しています。彼に師事した子どもが更に次の世代を指導していくかもしれません。こうして次へ次へと紡がれていく人の思いと行動。この繰り返しが、地域社会の営みです。過去から未来へと続く「優しさ」と「強さ」の連鎖が力強く広がりを持っていくことで、この地域は、躍動する地域であり続けることができます。

優しさという思いを強さという行動で、未来へ繋ぎましょう。
繋がれた現在を子どもたちに明るい未来として確かに渡すために。